日中の定年制度はどこが違う?中国の段階的延長と日本の65歳・70歳を整理

情報確認日:2026年10月16日。制度の施行日と資料の公表日を分けて記載しています。
「中国は63歳定年、日本は70歳定年」。このような見出しだけでは、2026年時点で従業員がいつ退職し、企業がどのような対応を求められるのかを正確に説明できません。中国の改革は段階的な移行で、日本の70歳までの就業確保は一律の定年引上げ義務ではないためです。
日中企業の人材計画で必要なのは、国を代表する一つの年齢を比べることより、退職年齢、雇用を確保する仕組み、年金の要件、本人の希望を分けることです。制度変更を理由に、人員数や採用枠が自動的に増減すると決めつけることも避けたいところです。
この記事では、中国の2025年からの改革と、日本の65歳・70歳に関する措置を整理し、技能継承、仕事の設計、採用・異動の計画へつなげます。個人別の退職日や年金額を算定する記事ではありません。
中国:2025年から15年かけて段階的に延長
中国の全国人民代表大会常務委員会は、2024年9月13日に法定退職年齢を段階的に延長する決定を採択しました。施行は2025年1月1日で、15年間をかけ、男性は従来の60歳から63歳へ、女性は従来の50歳・55歳からそれぞれ55歳・58歳へ移行する仕組みです。2026年に全員が一斉に最終年齢へ変わったわけではありません。出典:北京市政府掲載・全人代常務委員会の決定と実施方法。
実施方法は、従来の区分に応じた段階的な引上げと、一定条件の下での柔軟な早期・延期退職も定めています。実際の対象年齢は、生年月や区分等によって確認が必要です。男女の最終年齢の表だけから、従業員の退職月を計算しないようにします。
また、年金の最低納付年数の段階的な引上げは2030年からの別の予定です。退職年齢の変更開始と、年金の納付年数の変更開始を混同すると、本人への説明を誤る可能性があります。

日本:65歳までの雇用確保と、70歳までの就業確保
日本では、希望者全員を対象とする65歳までの高年齢者雇用確保措置が、経過措置の終了を経て2025年4月から全面的に施行されています。選択肢には定年引上げ、継続雇用制度、定年の廃止があります。これは、すべての企業が同じ定年年齢へ一律変更するという意味ではありません。出典:厚生労働省・2026年の高年齢者等職業安定対策基本方針。
70歳までの就業確保措置は2021年4月からの努力義務で、厚生労働省は70歳までの定年引上げを義務付けるものではないと説明しています。雇用だけでなく、一定の条件を満たす業務委託や社会貢献事業への従事を含む選択肢もあります。具体的な制度導入の要件は公式資料で確認します。出典:厚生労働省・70歳までの就業機会確保。
「働ける年齢」と「従来と同じ職務・勤務日数・待遇で働くこと」は同じ問いではありません。制度の選択と、個々の役割・労働条件・本人の希望の調整を分けて考える必要があります。
比較表:同じ「年齢」でも、指している制度が違う
中国の法定退職年齢と、日本の雇用・就業確保措置を同じ一本の物差しへ置くと、違いが消えてしまいます。次の表は制度の性質を比較するための整理です。個人別の適用や例外を網羅するものではありません。
| 観点 | 中国 | 日本 |
|---|---|---|
| 主な動き | 2025年から法定退職年齢を段階的に延長 | 65歳までの雇用確保・70歳までの就業確保 |
| 時間軸 | 最終年齢へ15年間で移行 | 65歳措置の経過措置が2025年3月末で終了 |
| 70歳という数字 | 今回の一般的な最終年齢ではない | 就業確保措置の努力義務を指す |
| 会社で必要な確認 | 生年月・区分・適用される退職時期 | 採用している措置・本人希望・労働条件 |

制度変更を、人員削減や採用抑制へ直結させない
退職時期が延びれば、ある職場では技能を引き継ぐ時間が増えるかもしれません。一方、仕事の負荷や勤務形態を調整しなければ、本人も会社も無理をする可能性があります。これらは事業・職務・健康状態等で変わる実務上の論点で、制度変更だけから結果は決まりません。
若年者採用との関係も、単純な人数の足し引きでは判断できません。高年齢者と若年者が同じ職務を代替するのか、教育担当と現場担当のように補完するのか、売上や仕事量が伸びるのかを分けて考えます。年齢層の違いだけで、能力や生産性を決めつけないことが前提です。
たとえば、熟練者が週3日、若手が週5日働く架空のチームでは、人数2人をそのまま「2人分の稼働」と数えると計画がずれます。勤務時間に加え、指導・調整に必要な時間、引継ぎの範囲を確認する必要があります。
日中の拠点で使える、人材計画の作り方
まず個人別の情報を適切に管理したうえで、退職予定の分布と、業務上の重要性を分けて把握します。本社へ報告する資料では、詳細な健康情報などを広く共有せず、必要な権限・目的に応じて扱うことが大切です。
- 拠点ごとの制度と、会社が採用する措置を公式資料・就業規則で確認する。
- 本人に適用される退職時期や希望を、所定の手続で確認する。
- 職務、必要技能、勤務時間、引継ぎ先を一覧にする。
- 継続する仕事、負荷を調整する仕事、若手へ移す仕事を分ける。
- 再配置・教育・採用に必要な期間と費用を、年度計画へ反映する。
コンサルティングの焦点は「年齢表」から職務へ
制度比較を依頼するなら、年齢一覧だけでなく、対象者の確認方法、制度選択、職務再設計、引継ぎ、費用見積りの前提まで成果物へ含めると、経営判断に使いやすくなります。法律上の適用確認と、人事制度や現場運営の設計には、それぞれの専門性が必要です。
日中双方で制度が変わるときほど、「何歳まで働くか」を一問で片付けないことが大切です。制度の時間軸を押さえ、誰がどの仕事をどの条件で担うかへ落とす。その作業が、働く人の希望と企業の技能継承をつなぎます。