日中の広告・口コミ運用を見直す|中国の改正反不正当競争法と日本のステマ規制

情報確認日:2026年10月16日。制度の施行日と資料の公表日を分けて記載しています。
日中で商品を売るとき、翻訳した広告文を同じ手順で配信すればよいとは限りません。口コミの依頼、商品の無償提供、検索キーワード、販売ランキングの見せ方まで、取引相手との関係と実際の運用を確かめる必要があります。
中国では改正反不正当競争法が2025年10月15日に施行されました。日本では2023年10月から、広告であることを一般消費者が判別しにくい表示が景品表示法の規制対象となっています。本記事は、二つを同じ法律と扱わず、企業が共通して整えたい記録と承認手順を考えます。
「PRを付ければ何でもよい」「口コミはすべて広告」という両極端を避け、誰が内容を決めたか、何を約束したか、何を根拠に表示したかを分けることが出発点です。
中国の改正:施行済みの法律と2026年の執行方針を分ける
中国の国家市場監督管理総局は、2026年3月30日公表の実施通知で、改正反不正当競争法の施行に向けた執行上の重点を示しました。法律の改正日は2025年6月27日、施行日は同年10月15日です。2026年の通知日を、新しい法律の施行日と読み違えないようにします。出典:国家市場監督管理総局・改正反不正当競争法の実施通知。
通知には虚偽の宣伝、混同、商業賄賂、営業秘密、ネット上の競争など、広告表示だけにとどまらない論点があります。ネット取引では、架空の取引や評価などを通じて競争秩序を乱す問題も取り上げられています。
したがって、中国向けの販促を点検するときは、投稿の末尾に広告表示を加えるだけで完了とはいえません。レビューの作られ方、売上順位の計算対象、競合名称の使い方、代理店への指示内容まで確認する設計が必要です。具体的な適法性は個別行為と現行の関連規則を踏まえて判断します。

日本のステマ規制:広告主の関与を確かめる
消費者庁のQ&Aは、規制対象が原則として表示内容の決定に関与した広告主であると説明しています。インフルエンサーの投稿という形式だけで、誰が規制対象かが決まるわけではありません。共同して商品・サービスを供給するなどの場合には、別の検討が必要です。出典:消費者庁・ステルスマーケティングに関するQ&A。
商品を提供したという一事だけで、すべての投稿を同じ結論へ導くことも適切ではありません。依頼の内容、取引関係、投稿への働きかけ等を踏まえ、事業者の表示といえるかを確認します。自主的な感想と、実質的に内容を指定した宣伝を区別するためにも、依頼履歴が重要です。
広告に当たる場合は、閲覧者がそのことを認識できる表示かを点検します。小さな表示や分かりにくい位置へ隠す運用は避けたいところです。また、広告であることが分かっても、品質や効果の説明に根拠が不要になるわけではありません。
比較表:名称より、何を確認する制度なのかを見る
中国の反不正当競争法は幅広い競争行為を扱い、日本のステマ規制は広告であることの判別しにくさを扱います。ここでは法律全体の優劣ではなく、販促実務で見落としやすい点を比較します。
| 観点 | 中国の今回の確認軸 | 日本のステマ規制の確認軸 |
|---|---|---|
| 対象の広がり | 宣伝・混同・ネット取引などの競争行為 | 事業者の表示と広告の判別可能性 |
| 口コミの点検 | 架空取引・評価などの実態 | 広告主による内容決定への関与 |
| 確認する証拠 | 取引・評価・表示根拠・指示履歴 | 依頼内容・関係性・実際の掲載表示 |
| 共通する作業 | 現地の担当者を含めた運用確認 | 代理店任せにしない承認と記録 |

架空の作例:美容商品の紹介を依頼する場合
たとえば、日本の販売会社が中国語圏の投稿者へ商品を提供し、掲載日、必須表現、購入リンクまで指定する案件を考えます。これは説明用の仮定で、特定ブランドの事例ではありません。国籍や使用言語だけから適用法を決めず、販売先、取引主体、表示の対象などを確認する必要があります。
運用面では、商品の提供、報酬、文言指定、修正依頼、広告であることの表示を、それぞれ契約と掲載画面で照合します。「使用感がよい」という感想の依頼から、裏付けのない治療効果の断言へ変わっていないかも、別の確認事項です。医薬品・化粧品等には商品分野固有の規制があるため、本記事だけで判断しません。
代理店が再委託した場合も、依頼元の想定と最終投稿が一致するとは限りません。翻訳時に強い断定が加わる、広告表示が消える、架空の利用体験へ書き換わるといった点を防ぐため、承認後の実際の画面を残すことを勧めます。
日中共通で整えたい、販促案件の管理表
以下は社内管理の提案であり、法令上の必要記録を網羅する一覧ではありません。広告審査の担当と営業担当が同じ情報を見られるよう、案件番号をそろえると確認しやすくなります。
- 商品、販売地域、販売主体、投稿先、想定する読者を記録する。
- 報酬・商品提供・割引・紹介料と、投稿者への依頼内容を残す。
- 数値・比較・効果の表現について、裏付け資料と有効期間を確かめる。
- 日本語と中国語の文面を照合し、広告表示を含めて承認する。
- 公開後の画面と修正履歴を保存し、リンク切れや内容変更を点検する。
コンサルティングで支援できる範囲を具体化する
外部へ依頼するなら、「広告を適法にする」という抽象的な依頼だけでなく、対象国の確認、商品分野の規則調査、契約と文面の照合、代理店の運用点検、研修という作業へ分けます。法律判断が必要な場面では、現地の専門家との連携と判断範囲も明確にします。
日中で共通化しやすいのは、根拠と依頼履歴を残す仕組みです。一方、具体的な表示義務や適用範囲まで同一化すると誤りやすくなります。まず進行中の一案件を選び、依頼から掲載後の画面までをたどることが、実務に役立つ見直しになります。