中国と日本の人件費を比べる|基本給だけでは見えない採用・定着コスト

中国の給与を日本円に換算すると安い。そう見えても、現地拠点の人件費を抑えられるとは限りません。必要な職種、都市、経験、使用言語によって採用条件は違います。会社負担や教育、離職による費用も発生します。
日中の公的な給与統計を読む際の条件を確認し、実際の拠点計画で比較する項目を整理します。目的は賃金の国別ランキングではなく、必要な仕事を継続して提供できる人員と費用を見積もることです。
平均給与は、採用する人の見積もりではない
| 統計・2025年 | 公表値 | 条件 |
|---|---|---|
| 日本・現金給与総額 | 月355,941円 | 毎月勤労統計、事業所規模5人以上、就業形態計 |
| 中国・都市非私営単位 | 年129,441人民元 | 都市の対象法人単位の就業者平均 |
| 中国・都市私営単位 | 年71,590人民元 | 都市の私営法人単位の就業者平均 |
出典:厚生労働省・2025年分毎月勤労統計確報、中国国家統計局・2025年都市単位就業者年平均賃金。日本の確報は2026年2月25日、中国の発表は2026年5月15日です。
日本の就業形態計は一般労働者とパートタイム労働者を合わせた平均です。現金給与総額には特別に支払われた給与も含まれます。中国は都市内の就業者5人以上の法人単位等を対象とし、自営業者やフリーランス等は含みません。また「非私営」は国有企業だけの意味ではなく、外資企業などを含む区分です。
中国の賃金総額は税引前で、個人負担の所得税、社会保険、住宅積立金等の控除分を含みます。これを手取り額や、会社側が負担する総額と混同しないようにします。年額を12で割ることはできますが、賞与を含む平均月額と、募集時の基本月給を同じ数字として扱わないことが必要です。

会社負担は、地域と雇用条件で確認する
採用計画では、給与、賞与、会社負担の社会保険等、残業、手当、福利厚生を分けます。中国では住宅積立金等も含め、候補都市の適用基準、料率、算定基数、上限・下限を確認します。日本でも加入条件や保険の種類、年度によって必要な確認が異なります。
特定都市の一つの料率を中国全土へ適用したり、個人負担を会社負担へ二重に加えたりすると、費用を誤ります。見積書では「給与に含まれるもの」「会社が追加で負担するもの」「本人の給与から控除するもの」を分けてもらいます。個別の労務・社会保険の扱いは、現地の公的窓口や適切な専門家へ確認します。
日中の駐在員を配置するなら、現地社員とは別の計画が必要です。住居、移動、赴任・帰任、税務や保険の調整、家族に関する費用など、該当する項目を洗い出します。日本本社が負担する費用を現地拠点の外へ隠すと、事業全体の採算が見えなくなります。
採用単価より、定着するまでの費用を見る
採用費には求人広告や紹介料だけでなく、面接、選考、入社準備、研修、指導担当者の時間が含まれます。入社直後の生産性が安定しない期間や、退職後の欠員期間も検討します。安い基本給で採用できても、教育を繰り返すなら総費用が増えることがあります。
例えば、中国拠点で日本語が必要なのは全員か、窓口担当者だけかを先に整理します。技術力と語学力を一人で満たす採用にこだわるより、業務分担や翻訳の仕組みを設計した方が適切な場合があります。ただし、品質判断や安全上の指示が正確に伝わる仕組みは省けません。
日本へ進出する中国企業も、営業、顧客対応、物流管理、経理などの仕事を具体化し、外部委託できる範囲と自社で持つべき機能を分けます。人数を先に決めるより、業務量、時間帯、承認、代替担当を一覧にした方が採用条件を絞れます。
同じ通貨へ換算する前に、業務条件を合わせる
| 比較項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 職務 | 営業、製造、品質、経理等の役割と責任 |
| 経験・技能 | 必要な実務経験、資格、使用する設備や言語 |
| 時間 | 労働時間、休日、シフト、残業の扱い |
| 報酬 | 基本給、賞与、手当、昇給条件 |
| 会社負担 | 社会保険等、福利厚生、採用、教育 |
| 継続性 | 欠員、退職、引き継ぎ、代替要員 |
比較条件がそろったら、契約通貨のまま費用表を作り、予算の為替レートで換算します。為替が動いた場合の感応度も確認します。現地で得る売上と支払う人件費が同じ通貨か、日本本社がどこまで費用を負担するかでも、影響は変わります。

一人当たりの費用と、一件当たりの費用を分ける
以下は日中の実績ではない架空試算です。チームAの年間総費用が60万元、品質条件を満たして完了できる業務が年間1,200件なら、一件当たり500元です。チームBは年間48万元でも、同じ品質条件で年間800件なら一件当たり600元になります。
| 架空のチーム | 年間総費用 | 完了件数 | 一件当たり費用 |
|---|---|---|---|
| A | 60万元 | 1,200件 | 500元 |
| B | 48万元 | 800件 | 600元 |
件数は同じ難易度、品質、対応範囲でそろえる必要があります。速く処理しても、手戻りや不良が多ければ適切な比較にはなりません。人件費を減らすことだけでなく、手順の標準化、確認、引き継ぎによって安定した成果を出せるかを検討します。
この考え方は工場、営業支援、問い合わせ対応にも使えます。単純な件数が合わない仕事なら、品質基準を満たした案件の完了、納期、再作業の比率など、業務に合う尺度を決めましょう。
人材支援を相談する前に作る一枚
採用を相談する前に、役割、必須条件、任せる判断、教育担当、勤務場所、報酬範囲、入社希望時期を整理します。採用後の評価と定着の担当者も決めておくと、候補者を紹介して終わりになりにくくなります。
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