日中貿易の数字が資料で違う理由|輸出入・原産地・集計条件の読み方

日中貿易を調べると、同じ年なのに、日本が公表する対中輸出と、中国が公表する対日輸入が一致しないことがあります。資料の間違いと決める前に、どちらの国から、どんな基準で集計しているかを確認する必要があります。
この違いを理解すると、海外進出の調査で数字を混ぜたり、輸入額をそのまま自社商品の市場規模と考えたりする失敗を避けやすくなります。2025年の公表データを例に、貿易統計を事業判断へ使う手順を解説します。
2025年の日中貿易を「双方輸入」で見る
| 方向・集計の意味 | 金額・億米ドル、概数 |
|---|---|
| 日本から中国へ:中国の対日輸入 | 1,649.92 |
| 中国から日本へ:日本の対中輸入 | 1,782.62 |
| 上記の合計 | 3,432.55 |
出典:JETRO・中国の貿易投資年報、対日関係。元の掲載額を億ドル単位へ換算し、小数点以下を丸めています。丸めた内訳の合計と総額が一致しない場合があります。
「双方輸入ベース」は、両方向とも到着側が記録した輸入統計を使う整理です。日本から中国への流れは中国の輸入、中国から日本への流れは日本の輸入で表します。日本の財務省統計だけで対中輸出と対中輸入を合計した金額とは、集計方法が異なります。

仕向国と原産国は、同じ問いではない
日本の貿易統計は、原則として輸出を仕向国、輸入を原産国で計上します。例えば日本を原産地とする商品が香港を経由して中国へ入る場合、仕向地の扱いによって、日本の対中輸出と、中国の日本原産品の輸入が違って見えることがあります。
これは、実際の物流、所有権の移転、取引の契約相手、統計の相手国が常に同じとは限らないためです。日本の会社が香港の商社へ売り、最終的に中国で使われる取引では、どの段階を調べたいかによって採用するデータが変わります。定義は財務省貿易統計・よくある質問を参照してください。
市場調査の依頼書には「中国への輸出額」だけでなく、「日本原産品が中国で輸入された金額を知りたい」「日本から中国を仕向地として出した金額を知りたい」と目的を書き分けます。後から表を接ぎ合わせる際にも、方向と集計国を列名に残しておくと混乱を防げます。
FOBとCIFを、企業の利益と混同しない
日本の貿易統計では輸出をFOB価格、輸入をCIF価格で計上します。FOBは本船渡し、CIFは運賃と保険料を含む価格です。関税などを含む小売価格でも、輸入事業者の最終的な調達原価でもありません。出典:財務省貿易統計・金額の計上基準。
同じ商品の出発側と到着側で金額が違っても、差額がそのまま商社の利益だとは言えません。運賃、保険、取引経路、計上時期などを考慮する必要があります。貿易統計の金額は、個別企業の利益率を示す資料ではありません。
自社の見積もりを比較するときも、単価にどこまでの費用が含まれているかをそろえます。工場出荷価格と日本の倉庫への納入価格を並べれば、安く見える方に輸送や通関の費用が抜けている可能性があります。受渡条件と、その条件で誰が費用や危険を負担するかを確認します。
輸入額は「新しく取れる市場」ではない
貿易金額が大きい品目には、既存の大手顧客間の取引、企業内取引、長期契約、加工や再輸出に使われる商品などが含まれる可能性があります。輸入額全体を「自社が参入できる市場」と置くと、期待売上が膨らみます。
自社の商品に近い統計品目を確認し、その中に何が含まれるかを点検します。日本の統計は9桁の統計番号単位で集計され、品目によっては自社商品以外も同じ番号に入ります。統計からその商品だけを取り出せない場合があるため、細かい数字が取れることと、正確な市場規模が分かることを分けます。出典:財務省貿易統計・品目の調べ方。
さらに、現地の供給者、顧客が切り替える理由、品質や認証、最低発注数量、決済条件を調べます。輸入されていることは需要の存在を考える材料ですが、新しい供給者が採用される条件までは示していません。
金額が増えたときは、数量と単価も確認する
架空の例として、ある商品の取引が前年10万個・1個10ドル、当年9万個・1個12ドルだったとします。金額は100万ドルから108万ドルへ8%増えますが、数量は10%減っています。金額だけを見て需要量が伸びたと説明することはできません。
| 説明用の仮定 | 前年 | 当年 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 数量 | 10万個 | 9万個 | −10% |
| 平均単価 | 10ドル | 12ドル | +20% |
| 金額 | 100万ドル | 108万ドル | +8% |
実際の統計の平均単価が上がっても、同じ商品が値上がりしたとは限りません。高価格の仕様の比率が増えた、含まれる商品構成が変わったなどの可能性があります。数量の単位、統計分類の変更、為替の影響も確認します。この表は実際の日中貿易の結果ではありません。

調査の比較表には、七つの条件を残す
- 対象期間。暦年、年度、月次累計を区別する。
- 集計する国。日本側統計か中国側統計かを記す。
- 相手国の定義。仕向国、原産国などを確認する。
- 商品の分類。HS番号や統計番号と、その版を残す。
- 金額の基準。FOB・CIF、通貨、換算条件を記す。
- 数量の単位。重量、個数などをそろえる。
- データの確定状況。速報、確報、改定の有無を記す。
この表を作ってから同じ条件の時系列を比較すると、資料ごとの違いが説明しやすくなります。調査を委託する際も、結論だけでなく、元データと抽出条件を受け取れるかを確認しましょう。
日中の進出判断では、貿易統計で候補品目を絞り、その後に現地の顧客、競合、規制、採算を確認する流れが有効です。数字の大きさから判断を急がず、「この数字は何を含み、自社の条件とはどこが違うのか」を一つずつ確かめてください。華人的顧問のサービス案内もご覧ください。