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日中のEC市場を数字で読む|市場規模より先に販売の採算を確かめる

日中をつなぐ荷物と物流の流れを紙の彫刻で表現した概念イラスト
本記事のために制作した概念イラスト。実在の施設・企業の写真ではありません。

中国へ商品を売る方法として、越境ECは有力な検討対象です。日本の店舗をそのまま出店する場合とは異なる形で需要を試せる可能性があります。ただし、「市場が大きい」「ネットで全国へ届く」という説明だけで、収益を予測することはできません。

大切なのは、統計の対象を確認し、注文一件にかかる費用と継続購入を検証することです。日中の公的な2024年の指標を出発点に、商品選定から試験販売までの確認手順を整理します。

「EC市場」の範囲をそろえてから読む

2024年の指標日本中国
国内の物販EC金額約15.2194兆円約13.0816兆人民元
掲載された比率物販系BtoCのEC化率9.78%社会消費品小売総額に対する有形商品のネット小売26.8%
全体指標の注意BtoC全体にはサービス・デジタルを含むネット小売全体と有形商品を区別

出典:経済産業省・令和6年度電子商取引に関する市場調査、中国国家統計局・2024年国民経済の状況。中国の値は同発表時点の公表値です。

日本のBtoC-EC全体は約26.1兆円で、物販だけの15.2兆円とは違います。旅行等のサービスやデジタル分野を含む日本の全体額と、中国の有形商品だけの金額を比べないようにします。両国の比率も、調査方法や分母の範囲が違うため、差をそのまま「日本の何倍オンライン化した」と説明するのは慎重にすべきです。

ここから分かるのは、オンラインが重要な販売経路になっていることです。自社の競合、広告単価、返品率、販売可能な品目まで説明する指標ではありません。通貨が違う金額の単純な割り算も避けましょう。

物販ECを比べるときも、分母を確認。2024年。通貨・統計範囲が異なる参考指標です。
2024年の物販ECの参考指標。日中では通貨・調査方法・比率の分母が異なります。

中国から日本への購入額は、参入の保証ではない

経済産業省の同調査では、中国消費者による日本事業者からの越境EC購入額は2024年に2兆6,372億円です。日本の商品への需要を考える参考になりますが、この金額を全ての日本企業へ均等に割り当てられるわけではありません。品目、ブランド、既存の販売基盤によって条件は異なります。

販売経路を検討する際は、日本から直接発送する形、保税区などを利用する形、現地の一般貿易による販売などを分けます。通関、税、対象品目、販売者や輸入者の責任が異なるためです。「ECなら通常の輸入規制を確認しなくてよい」とは考えず、商品仕様と物流の流れを定義して確認します。

プラットフォームへの出店資格、保証金、手数料、広告条件は契約前に公式の出店資料で確認します。紹介会社の見積もりでは、プラットフォームの費用と運営代行の費用、最低契約期間、撤退時のデータや在庫の扱いを分けてもらいます。

注文一件の採算を、広告費まで含めて計算する

次は説明用の架空試算です。実際のプラットフォーム料金や日中ECの平均値ではありません。販売価格300元の商品に、商品原価120元、物流・保管30元、販売・決済手数料30元、返品等の見込費用15元がかかるとします。広告費を入れる前の限界利益は105元です。

広告費が一件当たり80元なら、広告費控除後は25元が残ります。一件110元ならマイナス5元です。売上が増えても、広告費が増えるほど赤字が広がることがあります。固定費、税、送金や為替の費用などはさらに別に確認します。

一件当たりの仮定金額
販売価格300元
原価・物流・手数料・返品等合計195元
広告費を入れる前の限界利益105元
広告費80元の場合控除後25元
広告費110元の場合控除後−5元

返品費用は、単純に商品代金へ返品率を掛けるだけでは足りない場合があります。返送送料、検品、再販売できない商品の損失、返金手数料など、実際に発生する項目を分けて見積もります。平均単価だけでなく、割引やクーポンを誰が負担するかも確認します。

継続購入は、期待値ではなく実測で更新する

「初回が赤字でもリピートで回収する」という計画では、継続率と継続購入の利益が根拠になります。初回注文数が増えたことだけでは、長期の採算は証明できません。同じ月に初回購入した顧客を追い、その後の購入と粗利を確認します。

例えば初回獲得100人のうち20人が一度再購入し、その一回から広告費控除後の利益が60元残ると仮定すると、初回獲得者一人当たりの追加利益は12元です。再購入が複数回続く場合も、期間、人数、値引き、再購入向け広告費をそろえて計算します。この例は手順を示すもので、実際の継続率ではありません。

短い試験期間では、使用周期の長い商品や季節商品の継続率を確定できません。未観測の期間を強気の予測で埋めず、確認できた結果と、まだ仮定の部分を分けて事業計画へ記載します。

広告費まで引くと、注文の採算が見える。販売価格300元・広告以外の変動費195元という架空試算
広告費を含む注文一件当たりの架空試算。固定費や税等は別に確認します。

小さく試すときも、判断条件は先に決める

  1. 対象顧客と購入場面を決め、比較する競合商品の仕様と実売価格を確認する。
  2. 商品の輸出入、表示、品目条件を確認し、責任を持つ事業者を整理する。
  3. 送料、手数料、返品、広告を含めた注文一件の採算表を作る。
  4. 試験地域、期間、在庫上限、広告費上限を決める。
  5. 注文、配送完了、返品、問い合わせ、利益を同じ単位で集計する。
  6. 継続、商品修正、中止の条件を決めてから追加投資を判断する。

販売代行を利用する場合も、管理画面の売上数字だけでなく、費用明細、在庫、返品、顧客対応の内容を確認できる契約にします。アカウントの管理者、商標、商品画像、顧客データの利用範囲と、契約終了時の引き継ぎも事前に整理する必要があります。

日本向け販売でも同じです。中国で売れている商品が、日本の表示、配送、保証、顧客対応の条件を満たしたときにいくらで売れるかを検証します。日中比較の目的は市場の大きさを競うことではなく、自社が継続できる販売条件を見つけることです。

相談前には、候補商品、価格、原価、物流案、出店先、在庫と広告に使える予算、試験後の判断基準を整理してみてください。華人的顧問のサービス案内も参考に、必要な市場調査や現地の確認事項を具体化しましょう。

2026年10月15日
Bi Tao