中国14億人・日本1億人台を売上予測に直結させない|人口と商圏の比較

中国の人口は日本より大きい。その事実だけでは、どちらに出店すべきか、何店舗必要か、何件の注文を見込めるかは決まりません。日本の地方都市でも対象顧客が集まる場所はありますし、中国の大都市でも配送範囲や価格帯が合わなければ顧客へ届きません。
進出計画では、人口を「全国の規模」「地域への集中」「自社が対応できる商圏」の順に読み替えることが大切です。日中の人口統計を出発点に、店舗、EC、法人営業で使える商圏の作り方を整理します。
まず基準日と地域の範囲を確認する
| 項目 | 日本 | 中国 |
|---|---|---|
| 人口 | 123,049,524人 | 1,404,890,000人 |
| 基準日 | 2025年10月1日 | 2025年末 |
| 使用資料 | 2025年国勢調査・人口速報 | 2025年統計公報・速報値 |
| 対象範囲の注意 | 日本に居住する外国人を含む | 本土31省・自治区・直轄市等。香港・マカオ・台湾と本土在住外国人を含まない |
日本は約1億2305万人、中国は約14億489万人です。基準日や人口の定義が違うことを踏まえ、国の規模をつかむ参考値として使います。中国本土の数字に香港などを足したり、日本人だけの人口と日本の総人口を入れ替えたりしないようにしましょう。出典:総務省統計局・2025年国勢調査人口速報集計、中国国家統計局・2025年統計公報。
「人口が減った」という表現も期間の確認が必要です。日本の同速報では2020年から2025年までの5年間で約309万7千人、2.5%の減少です。これを1年間で2.5%減ったと説明すると、変化を大きく見せてしまいます。全国の減少と、各都市の増減も別に調べます。

全国人口の中で、顧客はどこにいるのか
日本の2025年国勢調査速報では、東京圏の人口は約3698万6千人、全国の30.1%です。ここでいう東京圏は東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県の合計で、東京都だけの人口ではありません。行政区分を変えた都市ランキングを、そのまま比べないことが重要です。
同速報の福岡市の人口は1,663,892人で、2020年から51,500人増えています。一方、福岡県全体は人口が減少しています。「福岡は増えている」という言い方では、市なのか県なのかが曖昧になります。出店候補地を調べるなら、市区町村から駅、町丁目、施設周辺へと細かく見ます。出典:2025年国勢調査人口速報・都道府県、市区町村の結果。
中国の2025年末の都市人口は約9億5380万人で、都市化率は67.89%です。ただし、「都市人口」の分類を日本の市部人口や特定の大都市圏人口と同じものとして扱うことはできません。中国の都市を比較するときは、市全域、都市の中心部、実際の配送対象区など、調査対象を明示します。出典:中国国家統計局・2025年統計公報。
店舗の商圏は、距離より移動条件で決まる
飲食店や生活関連サービスでは、「半径3キロに何人住んでいるか」だけでは足りません。駅の出入口、川や幹線道路、坂道、駐車場、競合店の位置によって、来店しやすさが変わります。昼の就業者が多い地域と、夜間の居住者が多い地域では、同じ人口でも必要な営業時間や商品構成が違います。
中国の商業施設内に出店する場合も、施設全体の来場者数と自店前の通行人数を分けます。集計対象の日、時間帯、休日、イベントの有無を確認し、候補区画で観察します。日本の店舗の客数を人口比で拡大するより、現地の動線を観察する方が有効な場合があります。
商圏調査では、人口と合わせて、昼夜間の利用者、主要な移動手段、競合の価格と混雑、近隣施設の開閉店予定を記録します。現地調査を外部へ依頼するなら、写真を何枚撮るかより、曜日や時間帯をどうそろえるかを先に決めると比較しやすくなります。
ECでも「全国に売れる」と「全国へ売る」は違う
ECは店舗の距離の制約を減らせますが、物流、返品、問い合わせ対応まで全国に提供できるとは限りません。配送日数、冷蔵・冷凍の可否、追加送料、設置や修理の対応範囲を決めると、実際の対象地域が見えてきます。
広告が届く人の数も、そのまま顧客数ではありません。商品を必要とする人、価格に納得する人、説明を理解する人、決済できる人、受取条件が合う人へと絞られます。初回注文を取れても返品が多ければ、売上の数字だけでは採算を説明できません。人口は広告予算の上限を決める数字ではなく、調査対象の広さを考える数字として使います。
| 販売形態 | 人口に加えて調べること | 初期の検証方法 |
|---|---|---|
| 店舗 | 時間帯別動線、競合、来店手段 | 現地観察、期間限定販売 |
| EC | 対象地域、配送料、返品、広告到達 | 地域を限定した試験販売 |
| 法人営業 | 対象業種の拠点、決裁者、導入条件 | 候補企業へのヒアリング、試用 |
仮の商圏から、必要な顧客数を逆算する
以下は説明用の仮定です。あるサービスの対象地域に5万世帯があり、そのうち対象となる生活条件の世帯が20%、告知によって接点を持てる割合が10%、その中で初回利用に至る割合が5%とします。
計算上の初回利用世帯は、50,000×20%×10%×5%=50世帯です。全国に何億人いるかという話から離れて、50世帯の獲得に必要な費用、提供に必要な人員、その後の継続率を検討できます。この割合は日中の平均値ではなく、実際の調査と試験販売で更新する前提です。
さらに、月間固定費が60万円で、1世帯当たり月間の限界利益が6,000円なら、固定費を回収するには月100世帯の利用が必要です。初回50世帯という試算では、そのまま黒字になるとは言えません。対象地域を広げる前に、継続率、紹介、提供価格、業務効率のどこを改善するかを調べます。利益と売上、初回と継続を分けて計算しましょう。

人口予測より先に、調査の更新条件を決める
人口の長期予測は拠点投資の参考になります。ただし、数年先の店舗収益は、周辺の再開発、競合、取扱商品、賃料条件にも左右されます。予測の数字を精緻に見せるより、どの条件が変わったら計画を見直すかを決めておく方が実務的です。
例えば、開店前に想定した通行人数が現地調査で大きく違った、配送費の見積もりが予算を超えた、対象顧客の価格許容度が合わなかった場合は、出店場所や販路を再検討します。市場を広く定義して売上を大きく見せるより、狭い範囲で成立する仕組みを確認してから拡大する方が、検証すべきことを明確にできます。
日中のどちらを検討する場合も、最初に「誰へ、どこまで、どの条件で届けるのか」を一文にしてみてください。その条件に合う人口や企業数を調べ直すことで、進出計画の根拠が具体的になります。華人的顧問のサービス案内では、市場調査などの支援分野を紹介しています。相談時は候補地域、想定顧客、価格、調査後に決めたい事項を整理しておくと有効です。